法務note

Q 株式を譲渡する場合(譲り受ける場合)の留意点

会社法

Q 株式を譲渡する場合(譲り受ける場合)の留意点
A 株券発行会社の場合には、株券の交付が必要である。また、定款で譲渡制限が設けられている会社については、譲渡人である株主又は取得者から、会社に対して承認を請求し、会社の承認を得る必要がある。最後に、株主名簿の名義書換手続をしておく必要がある。

1 総論
株式を譲渡する場合(譲り受ける場合)には、当事者間で譲渡の効力を発生させ、かつ、会社に対して株式の取得を主張できるように株主名簿の名義書換を請求する必要がある。また、株式の譲渡について会社の承認を要する旨の定款の定めがある譲渡制限株式の場合、譲渡予定株主からその譲渡を、又は、取得者からその取得について会社に対して承認の請求をし、会社の承認を得ないと株主名簿の名義書換請求ができない。

2 株券発行会社の場合
当事者間で譲渡の効力を発生させるためには、当該株式を譲渡する旨の合意が必要であるが、更に、株券発行会社(会社117条7項)の株式の場合には、株券の交付が必要となる(会社128条1項)。株券発行会社の株式の譲渡における株券の交付は、株式譲渡の対抗要件ではなく、効力発生要件である。そのため、株券発行会社でありながら、何らかの事情で株券が発行されていない場合(会社法215条4項・217条)、譲渡前に、会社に対して株券の発行請求をしておく必要がある。また、株券を紛失してしまっていた場合には、株券執行制度を用いる必要がある。

Q 株券の発行がなされない場合
最高裁昭和47年11月8日大法廷判決(民集26巻9号1489頁)は、「少なくとも、会社が右規定(商法204条2項)の趣旨に反して株券の発行を不当に遅滞し、信義則に照らしても株式譲渡の効力を否定するを相当としない状況に立ち入った場合においては、株主は、意思表示のみによって有効に株式を譲渡でき、会社は、もはや、株券発行前であることを理由としてその効力を否定することができず、譲受人を株主として遇しなければならないものと解するのが相当である。」
と判断している。

3 株式譲渡(株式取得)承認請求
譲渡制限株式の場合、会社の承認を得る必要がある。承認がない限り、名義書換請求は認められない(会社法134条)。承認請求は、譲渡しようとする株主(会社法136条)からも、又、株式を取得した取得者からもできる(会社法137条1項)。但し、後者の場合には、原則として、当該株式に係る株主名簿上の株主と共同して請求する必要がある(会社法137条2項)。承認請求とそれを受けた会社の対応については、「Q 株主から株式譲渡承認請求がなされた。どのように対応すればいいか。」を参照。

4 株主名簿書換請求
株券発行会社の場合、譲受人は、株式会社に対して、株券を提示して名義書換を請求する必要がある(会社法133条2項、会社規則22条2項1号)。株券発行会社でない場合、譲渡人と譲受人が共同して名義書換の請求をする必要がある(会社法133条2項)。譲渡人がその手続きに協力しないような場合には、名義書換の意思表示をすべきことを命じる確定判決等を取得し、単独で名義書換請求をすることになる(会社法133条2項、会社規則22条1項1号2号)。