企業法務のQ&A

Q 株主から株券を紛失したため、株券を再発行して欲しい旨の依頼を受けた場合、どのような対応をとればいいでしょうか。

会社法

A 株券喪失登録簿への株券喪失登録の請求を促すべきでしょう。

1 株券失効制度
 株券は、有価証券であるため、株式について無権利者(盗難者等)から株券を譲り受けた場合でも、善意取得という制度によって、株式の権利を取得することがあります(会社法131条2項)。
 よって、株券の再発行の申出人が、株主名簿上の株主であっても、株式の善意取得者が存在する可能性がある以上、会社は、株券の再発行に応じることができません(会社法228条2項)。そこで、株券を喪失した者は、株券失効制度(会社法223条)を用いて、株券を無効にしてから、株券の再発行を受ける必要があります。
 なお、手形や小切手等他の有価証券を紛失した場合に用いられる有価証券無効宣言公示催告手続(非訟事件手続法114条以降)は、株券には適用されません(会社法233条)。

2 株券喪失登録の請求
 株券喪失者は、会社に対して、喪失した株券についての、株券喪失登録の請求をすることになります(223条)。株券喪失者には、株主名簿上の名義人である場合と、名義人でない場合(名義人である株主から株式の譲渡を受けたが、名義書換請求前に株券を紛失したような場合)があります。
 名義人の場合、株券を喪失した事実を証する資料を提出する必要があります(会社規則47条3項1号)。「株券を喪失した事実を証する資料」とは、警察署発行の「盗難届証明書」・「罹災証明書」、又は、紛失した顛末を記載した喪失者自ら作成した上申書等があります。
 名義人ではない場合には、これらに加えて、名義人が株式を取得した日(会社法121条3号)以降に株券を所持していたことを証する資料(売買契約書等)を提出する必要があります。

3 株券喪失登録簿への記載・登録と通知
 株券喪失者から、上記株券喪失登録の請求を受けた会社は、株券喪失登録簿に、株券番号、喪失者氏名・住所、株券喪失登録日等の株券喪失登録記載事項(会社法221条1号乃至4号)を記載・登録する必要があります。
 そして、会社は、喪失者が株主名簿上の名義人と異なる場合には、遅滞なく、名義人に対して、株券について株券喪失登録簿への登録をしたこと等を通知する必要があります(会社法224条1項)。
 また、株券喪失登録がなされた株券が、名義書換請求等の権利行使のために会社に提出された場合にも、会社は、遅滞なく、株券提出者に対して、当該株券について株券喪失登録簿への登録がされている旨を通知する必要があります(会社法224条2項)。以下に述べる株券喪失登録の抹消申請をする機会を与えるためです。

4 株券喪失登録の抹消申請
 株券喪失登録がされた株券の所持者は、株券喪失登録の日の翌日から1年を経過するまで、会社に対して、株券を提出して、株券喪失登録の抹消申請をすることができます(会社法225条1項・2項)。この申請を受けた会社は、遅滞なく、株券喪失登録者に対して、株券喪失登録抹消申請者の氏名及び住所等を通知しなければいけません(会社法225条3項)。会社は、この通知をした日から2週間を経過した日に、株券喪失登録を抹消し、株券を株券喪失登録抹消申請者に対して返還する必要があります(会社225条4項)。
 株券喪失登録者は、株券喪失登録抹消申請者が無権利者であると考える場合、株券が返還され、第三者に善意取得されることを防ぐために、この2週間の間に、占有移転禁止の仮処分(民事保全法23条1項)をすべきことになります。そして、会社としては、株券喪失登録者と株券喪失登録抹消申請者間で争われることになると思われる株主たる地位の確認に関する訴訟の結論に従えばいいことになりますが、その結論が出るまでは、株主名簿上の株主を株主として扱うことになります。
 2週間の起算日については、株券喪失登録者が株主名簿上の名義人ではない場合、通知の到達日の翌日から起算することになりますが、名義人の場合、実際の到達日ではなく、当該通知が通常到達すべきであったときに、到達したものとみなされる(会社法126条2項)ので注意が必要です。

5 株券の失効と株券の再発行
 上記の株券喪失登録抹消申請がなされることなく、登録日の翌日から1年を経過した場合、その日に当該株券は無効となります(会社法218条1項)。そして、会社は、株券喪失登録者に対して、株券を再発行する必要があります(会社法218条2項)。
 株券喪失登録者が、名義人でなかった場合には、株券の再発行を受けてから、会社に対して株主名簿の名義書換請求をすることなります。なお、株券喪失登録簿に株券喪失登録がされた日の翌日から起算して1年経過した日、又は、株券喪失登録が抹消された日のいずれか早い日までの間、当該株式について、株主名簿の名義書換をすることができません(会社法230条1項)。