法務note
Q 「遺言書保管制度」について
【根拠法】
略称 遺言書保管法
正式名称 「法務局における遺言書の保管等に関する法律」(平成30年法律第73号)
成立日 平成30年7月6日
施行日 平成32年(2020年)7月10日
【遺言書保管法の要点】
1 遺言書保管制度の創設と各種手続の定め
各種手続
① 保管の申請
② 保管
③ 情報の管理
④ 各種証明書の交付
2 検認手続(民法1004条)不要
【制度趣旨】
自筆証書遺言の手軽かつ自由度の高い(1人で、どこでも、費用も不要)利便性を生かし、
かつ、
自筆証書遺言のリスク(真正や内容をめぐる紛争。遺言書の紛失。存在に気づかれない等)を軽減。
【申請できる遺言書】
1 自筆証書遺言(民法986条)
2 法務省令で定める様式に従って作成した無封の遺言書(4条2項)
【遺言書保管所の管轄】
以下のいずれかを管轄する遺言書保管所のいずれでもよい(4条3項)
1 遺言者の住所地
2 遺言者の本籍地
3 遺言者の所有する不動産の所在地
但し、他の遺言書が現に遺言書保管所に保管されている場合には、当該遺言書保管所となる。
∵ 複数の遺言書保管所での保管を認めると、相続人の負担が増大し、事務が複雑化するため。
【申請人】
遺言者本人のみ。遺言書保管所に自ら出頭する必要がある(4条1項、6項)。
本人確認書類の提出が必要(5条)。
【手数料】(法務局における遺言書の保管等に関する法律関係手数料令)
申請・請求の種別 | 申請・請求者 | 手数料 |
遺言書の保管の申請 | 遺言者 | 一件につき,3900円 |
遺言書の閲覧の請求(モニター) | 遺言者 関係相続人等 |
一回につき,1400円 |
遺言書の閲覧の請求(原本) | 遺言者 関係相続人等 |
一回につき,1700円 |
遺言書情報証明書の交付請求 | 関係相続人等 | 一通につき,1400円 |
遺言書保管事実証明書の交付請求 | 関係相続人等 | 一通につき,800円 |
申請書等・撤回書等の閲覧の請求 | 遺言者 関係相続人等 |
一の申請に関する申請 書等又は一の撤回に関 する撤回書等につき, 1700円 |
【申請の方式】
遺言書と所定の記載事項を記載した申請書を提出(4条4項)
申請書
https://www.moj.go.jp/MINJI/06.html
記載事項
① 作成年月日
② 遺言者氏名、生年月日、住所、本籍
(これに係る証明書類も必要)
③ 受遺者及び遺言執行者の氏名住所
④ その他法務省令で定める事項
【保管】(6条)
1 遺言書保管所施設内で保管
2 遺言者は、いつでも閲覧請求可能
3 保管期間
死亡日から政令で定める期間
【情報の管理】(7条)
磁気ディスクに
① 遺言書画像情報
② 作成年月日、遺言者名、受遺者名、遺言執行者名
③ 保管開始年月日
④ 遺言書保管所の名称、保管番号
が記録される。
【保管の申請の撤回】(8条)
遺言者は、保管の申請の撤回をすることによって、遺言書の返還を受けることができる(8条)。
自ら出頭する必要がある。
なお、遺言者が死亡すると、遺言書保管所に保管されている遺言書については、その相続人も返還請求ができない。
廃棄又は消去されるまで、保管所にて保管又は管理されることになる。
【遺言書情報証明書】(9条)
関係相続人等(※1)は、遺言者の死後、遺言書情報証明書の交付を請求できる(※2)。この証明書によって、各種手続を行う。
※1 関係相続人等
① 遺言者の相続人(欠格事由(891条)がある者又は廃除によって相続権を失った者及び相続放棄をした者を含む。)
② 受遺者
③ 遺言執行者
※2 自己が関係相続人等に該当する遺言書(関係遺言書)を現に保管する遺言書保管所以外の遺言書保管所に対しても交付請求ができる。
【閲覧請求】(9条)
関係相続人等は、遺言者の死亡後、関係遺言書の閲覧を請求できる(9条3項)。
但し、関係遺言書を保管する遺言書保管所の遺言書保管官に対してのみ可能。
【保管している旨の通知】(9条)
関係相続人等に、遺言書情報証明書の交付又は閲覧をさせたときは、その他の相続人、受遺者、遺言執行者に対して、遺言書を保管している旨の通知をする(9条5項)
【遺言書保管事実証明書】(10条)
何人も、関係遺言書(※)の保管の有無、及び、保管されている場合、その内容についての証明書の交付請求ができる。
保管されていないことの証明書は、相続人による請求の場合、遺言者の遺言が保管されていないことを意味する。しかし、相続人以外の者による請求の場合、保管されていない場合はもちろん、保管されていても、その者が関係相続人等とする遺言書が保管されていないことを意味する場合もある。
※ 自己が関係相続人等に該当する遺言書(9条2項)