法務note
Q 特例有限会社における特別決議
会社法上、株主総会における特別決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(※1)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2(※2)以上の賛成によって成立する(会社法309条2項)。
しかし、特例有限会社の場合の特別決議は、「総株主の半数以上(※3)であって、当該株主の議決権の4分の3」以上の賛成が必要となる(整備法14条3項)。
この「総株主」及び「当該株主」に議決権を行使できない株主も含まれるか問題となるが、含まれると解される。上記のように整備法は、会社法上の「当該株主総会において議決権を行使することができる」という文言をあえて除外して読み替えていること、及び、旧有限会社法48条2項は、特別決議の場合の「総社員」には議決権を行使することができない社員は参入しないこと、また、総社員の議決権の数に議決権をを行使することができない議決権を参入しない旨を定めていたが、整備法がこの規定を引き継いでいないことが理由とされる。
鳥取地裁平成29年9月15日判決(金融・商事判例1528号37頁)は、特例有限会社において株主の相続人に対する売渡請求をするための特別決議の効力が争われた事案において(※4)、上記と同様、整備法14条3項の「総株主」及び「当該株主」には当該決議との関係で議決権行使を制限された株主が含まれるとして、成立要件を満たしていない総会特別決議の取消しを認めた。この控訴審である広島高裁松江支部平成30年3月14日判決(金融・商事判例1542号22頁)も原審と同様の判断をしている。
※1 3分の1以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上
※2 これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合
※3 これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上
※4 株主の相続人に対する売渡請求(会社法174条以下)の場合の売渡請求の相手方は、売渡請求をしようとする場合に必要な株主総会において、議決権を行使することができない(会社法175条2項)。