法務note

Q 試用期間中の労働者の解雇

労務関係

Q 試用期間中の労働者は、会社の都合で本採用拒否(解雇)できますか。
A 本採用拒否又は解雇するためには、客観的に合理的な理由が必要で、社会通念上相当であることが必要です。

1 試用期間とは
 労働契約を締結するにあたって、3ヶ月から6ヶ月程度の「試用」期間の制度を設けている場合があります。この試用期間中に、当該労働者の人物、能力等から業務への適性を判断し、それがないと判断される場合には、本採用を拒否するという制度として使われています。適性を判断するための期間ですので、あまり長期間に亘る場合、違法無効とされる場合があります。「見習期間2ヶ月、試用期間1年」との定めを無効と判断した裁判例があります(ブラザー工業事件・名古屋地判昭和59.3.23労判439号64頁)。3ヶ月から6ヶ月程度が相当と思われます。
 なお、試用期間を延長することについて、就業規則の定めがなくても延長できるとの裁判例(中田建材事件・東京地判平12.3.22労判792号141頁)もありますが、就業規則で定めておくのが無難でしょう。

2 試用期間の法的性質
 この「試用」期間中の契約をどのように考えるのか争いあるところですが、解約権留保付き労働契約と考えるのが一般的と思われます。

3 解約権を有効に行使できる場合
 このように解約権留保付き労働契約と考えた場合、どのような場合に解約権を行使できるのかが問題になります。この点について判例は、通常の解雇よりも広い範囲において解雇が認められることを明らかにしました。
 しかしながら、全く自由に解雇(本採用拒否)できるわけではなく、客観的に合理的な理由が存し、社会通念上相当として是認しうる場合にのみ許される、と判断しています。
 よって、本採用を拒否するにあたっては、その理由が合理的か否か、客観的にもそのように判定できるか、という観点から考察する必要があります。