法務note
Q 取締役会の決議要件
取締役会の決議は、
ア 決議に加わることができる取締役の過半数が出席し(定足数)
イ その過半数の賛成
により成立する(会社法369条1項)。このア、イいずれの割合も、定款で加重をすることはできるが、軽減することはできない(株主総会の場合には、加重も軽減もできる(会社法309条1項)。)。
1 定足数
(1) 定足数算定の基礎(分母)となる取締役数
定足数算定の基礎(分母)となる取締役数は、現存する取締役の員数、又は、法令・定款で定める取締役の最低数のいずれか大きい員数となる(江頭「株式会社法 第7版」420頁注12)。
現存する取締役が2名で、定款で取締役の最低数を定めていない場合、法律上最低の員数は3人であるから、3名が定足数算定の基礎となる。その過半数である2名以上の参加によって、すなわち現存取締役全員が出席することにより、有効な取締役会が成立することになる。これによると法律上要求されている最低の取締役数3名を下回っている状態であるにもかかわらず、有効な取締役会の成立を認めることになり、違和感を拭えないが、必要最低員数を下回った直後の実務処理(取締役選任のための株主総会の招集決定等)のために、このように解されている(森本滋「会社法コンメンタール8-機関(2)」289頁)のであり、員数を是正しないまま放置するのは望ましくないであろう。
(2) 特別利害関係人
決議について特別利害関係を有する取締役がいる場合、その取締役は定足数算定の基礎(分母)には参入されない。会社法369条1項が「決議に加わることができる取締役の過半数」としているのはこの趣旨である。会社法制定前の商法260条の2は、「取締役会の決議は、取締役の過半数出席し、その取締役の過半数をもってこれをなす。」としていため、特別利害関係を有する取締役を、定足数算定の基礎とするか否か争いがあり、判例(最高裁昭和41年8月26日第二小法廷判決)・学説は、特別利害関係を有する取締役も定足数算定の基礎に参入すべきとしていたが、会社法369条1項によって参入しないこととされた。よって、3名の取締役がいる会社において、その内2人の取締役が当該決議に特別利害関係を有する場合、定足数は1名となり、利害関係を有さない残りの1名の賛成により取締役会決議は成立する(森本滋「会社法コンメンタール8-機関(2)」288頁)
(3) 定足数算定の基準時
定足数はいつの時点で充足されているべきか争いあるが、判例は、「討議・議決の全過程を通じて維持されるべき」(最高裁昭和41年8月26日第二小法廷判決)とする。
2 議決要件
(1) 利害関係人
利害関係人は、当該決議について、議決に加わることができない(会社法369条2項)。
(2) 議長の決裁権
「可否同数のときは、議長の決するところによる。」旨の定款規定は、議長に再度の議決権行使を認め、本来否決である場合を有効とするものであり、法定議決要件の緩和であり、無効と解されている(江頭「株式会社法 第7版」421頁注(14))。
但し、議決に際して、議長がその議決権行使を留保し、可否同数の場合に、議長の議決権を行使するという実務慣行には問題ない(森本滋「会社法コンメンタール8-機関(2)」291頁)。
また、可否同数の場合に、議長に一任する決議を改めて行うことについても問題がない。