法務note

Q 会社が特定の株主から株式を買い取る場合の留意点

会社法

A 「Q 自己株式の取得にかかる留意点」のとおり、自己株式を取得する場合の手続規制と財源規制に留意する必要があるが、特に、他の株主に売主追加の議案変更請求権があることに留意する必要がある

1 売主の追加の議案変更請求権
特定の株主から株式を取得する場合、株主平等原則の要請から、他の株主は、自己を売主に追加するよう議案の変更請求権を有している(会社法160条3項)。その結果、特定の株主から予定していた株式数を取得できない場合がある。
例えば、A株主が保有する株式100株を取得しようとした場合、株主総会での決議事項(議案)は、
① 所得する株式数100株
② 取得と引換えに交付する金銭の総額○円
③ 株式を取得できる期間
④ A株主にのみ法158条1項の通知をすること
になる。

しかし、この総会前に、株主Bから自己をも売主として議案に追加する旨の議案変更請求権が行使された場合、上記決議事項の内④を
④ A株主とB株主にのみ法158条1項の通知をすること
に変更することになる。


そして、例えばB株主が保有する株式300株の申込みをしてきた場合、上記決議事項の①を変更していない限り、按分比例(端数切捨)となる結果(会社法159条2項)、A株主からは20株しか取得できないことなります(100株÷(100株+300株)×100株)。

A株主からどうしても100株を取得する必要がある場合、予めB等他の株主からの議案変更請求権が行使されることを予想して、①と②の決議事項を決めるか、または、B株主からの議案変更請求権の行使後に①と②を変更する必要がある。さらに、この変更の結果、財源規制にも反することにならないか留意する必要がある。

2 株主の相続人の場合
しかし、会社が、株主の相続人等の一般承継人からその相続等によって取得した株式を取得する場合には、売主の追加の議案変更請求権はない(但し、公開会社の場合、又は、当該相続人等が議決権を行使した場合は除かれる(会社法162条)。)。