法務note

Q 私道部分について、車を通行させないようにできるか。

不動産

Q 自宅前の私道部分について、車を通行させないようにできるか。

私道であっても、建築基準法上の「道路」とされている場合、一般公衆の使用を受忍しなければいけない、という義務がある。
しかし、私道である以上、完全な所有権が失われてもいないため、「道路」としての性質に反しない限りで、「私道」を管理したり、制限したり等の裁量がある。
他方、「道路」だからといって、その道路を使用する人の権利となるわけではない。道路であり、一般公衆の使用に供される結果、その反射的利益として使えるに過ぎない。

しかし、当該道路が、使用する者にとって、「日常生活上不可欠の場合」には、「反射的利益」を超えて「権利」となると判断されている。
よって、その場合、私道所有者が、通行を妨害することは、違法となる。

この「日常生活上不可欠」か否かを判断するに際しては、
・ 日常生活で常時使用していたか否か使用していたか否か
・ 継続的に通行していたか否か
・ 当該私道を利用することなく公道にでることが困難か否か
・ 使用する現実的必要性
等のファクターによって判断されている。

さらに、これらについては、私道を
・ 歩行する場合
・ 自転車で通行する場合
・ 自動車で通行する場合
によって、利益考慮が異なることになる。すなわち、歩行よりも自転車、自転車よりも自動車の方が、「日常生活上不可欠」と判断されるためのハードルは高くなると思われる。

車の場合には、判例は肯定・否定結論が分かれていたが、最高裁平成9年12月18日判決(判例タイムズ959号153頁)は、車の通行を権利とした。但し、この事案は、建築基準法42条1項5号の道路である「位置指定道路」のため、幅員は4メートル以上であり、通常は車両の通行が予定されている道路であり、車の通行について権利性が認められやすいと思われる。

しかし、位置指定道路ではなく、私道が同法42条2項の「2項道路」の場合には、当初、車の通行が事実上不可能又は困難な幅員の道路であったが、それが拡幅されることによって車の通行が可能となるため、車が通らない(通れない)と考えていた私道所有者と、車を通行を望む者との利害が衝突することになる。

東京高裁平成11年12月16日判決(判例時報1706号15頁)は
・ 私道の幅員が3.3メートル程度に過ぎず、車両通行の安全性を確保しがたい道路であること
・ 車両が通行すると、当該私道を徒歩又は自転車で通行する者、道端で遊ぶ者の安全が害される可能性があること
・ かつて幅員が狭く車が通行できなかったこと。それを認識して敷地を購入していること
・ 分譲当初から幅員が4メートルあり、車の通行が予定されていた前記最高裁の判例の事案とは異なること
等の事情を理由に車での通行の権利性を否定した。