法務note

Q 行方不明株主の取扱

会社法

Q 行方不明の株主に対しては、どのような対応をすればいいか。

 

1 調査義務
株主に、配当等の通知をしても、会社に返送されてしまうことがある。このような場合、株主が転居したとか、死亡した等の事情が発生している可能性がある。しかし、会社としては、株主の所在や、死亡等の事実を調査する必要はなく、株主名簿に記載された住所に通知等を発すれば足り、実際に通知が受け取られなかったとしても、通常到達すべきであったときに、到達したものとみなされる(会社法126条1項・2項)。

2 通知・催告の省略
また、株主に対する通知・催告が5年以上継続して到達しない場合には、株式会社は、当該株主に対する通知・催告をすることが不要となる(会社法196条1項)。例えば、株主総会の招集通知が5年間到達しなかったような場合、最初に到達しなかった時から起算するので、年1回招集通知を発送しているとすれば、6回目の通知が届かなかった段階でこの要件を充たすことになる。なお、不到達が「継続」する必要があるので、1回でも到達している場合には要件を欠くことになる。

3 所在不明株主の株式の競売等
上記によって通知・催告が不要になった株主に係る株式については、株主が継続して5年間剰余金の配当を受領しなかった場合、当該株式について、裁判所の許可を得て、売却することができ、また、会社がこれを買い取ることができる(会社法197条2項・3項・4項。所在不明株主の株式売却制度)。但し、その対価は、分配可能額を超えることができない(会社法461条1項6号)。
なお、「継続して5年間剰余金の配当を受領しなかった場合」には、無配であった場合にもこの要件を充たすと解されている(江頭憲治郎「株式会社法 第8版」214頁注12)。