法務note

Q 株主名簿の記載と実態との齟齬

会社法

Q 現在の株主の実態と株主名簿上の記載との齟齬への対応

A 株主から適法な名義書換請求があったにもかかわらず、これを放置していたような場合、又は、過去の増資について株主名簿に反映させていない場合には、それを是正する必要がある。

 

1 株主名簿の作成義務
株式会社は、以下の事項を記載した株主名簿を作成し、これを本店に備え置かなければいけない(会社法121条・125条1項)。この違反には、罰則も設けられている(会社法976条7号)。
① 株主の氏名(名称)及び住所
② 株主の有する株式数(種類株式発行会社の場合、株式の種類及び種類毎の数)
③ ①の株主が株式を取得した日
④ 株券発行会社の場合には、②に係る株式の株券の番号

2 株式移転の対抗要件
株式を取得した株主は、株主名簿の名義書換が行われなければ、株式会社に対して、株式の譲渡を対抗できない(会社法130条)。名義書換が行われていない場合、株式会社としては、株主名簿に記載されている株主を株主として扱えば足りる。こうすることによって集団的法律関係の画一的処理が可能となる。
よって、ある株主の株式について、相続や譲渡により移転があり、実際の株主と株主名簿上の株主との間に齟齬があることを会社が知っていたとしても、会社としては、株主名簿上の株主を株主として扱えば足りる。
なお、「対抗することができない」に過ぎないので、会社が、株主名簿の名義書換が行われていなくても、株式の譲受人を株主として扱うことはできる(最判昭和30年10月20日民集9巻11号1657頁)。
但し、譲渡制限株式について、譲渡承認手続がなされていないにもかかわらず、会社が、株式譲受人を株主として扱うことはできない(最判昭和63年3月15日判時1273号124頁)。

3 適法な株主名簿の名義書換請求がなされたていた場合には、速やかに名義書換をする必要がある。また、過去、増資等をすることによって発行済株式数が増加していたり、株主構成が変更されていたりしているにもかかわらず、株主名簿がこれを反映していない場合、速やかにこれを是正する必要がある(会社法132条)。