法務note

Q 譲渡制限株式の限界

会社法

Q 当社の株式には、譲渡制限が付されているが、当社の望まない者の手に当社の株式がわたることはないか。

A 通常は、株式に譲渡制限が付されていれば、会社が譲渡承認請求を拒絶することによって、望まない者が株主となることを避けることが可能である。しかし、「みなし承認」が成立してしまう場合、相続、合併等の一般承継の場合には、会社が望まない者に株式が渡る可能性がある。また、株主自体に変更がなくても、その支配権が変更することにより実質的に望まない者に変わる場合がある。

 

1 原則

株式は、自由に譲渡できるのが原則である(会社127条)。
しかし、株式会社は、定款にて、その発行する全部又は一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について会社の承認を要する旨の定めを設けることができる。この場合の当該株式を「譲渡制限株式」という(会社法2条17号)。譲渡制限株式を譲渡する場合、株式の譲渡人又は譲受人のいずれかから、会社に対して、当該株式の譲渡又は取得について承認を求める必要があり、会社の承認がないと株式の譲受人は、株式を取得したことを会社に主張できない。その結果、会社は、この譲渡承認を拒絶することによって、会社にとって好ましくない者が株主となることを避けることができる。

2 限界1(みなし承認)
しかし、譲渡制限株式の譲渡又は取得について、会社がその承認を拒絶する場合には、会社法に定められたルールに則る必要があり、一定の場合には、会社が株式の譲渡又は取得について、承認をしたものと見なす旨定められている(会社145条。みなし承認が成立する場合については、「Q 株主から株式譲渡承認請求がなされた。どのように対応すればいいか。」参照)。よって、そのような「見なし承認」が成立してしまうと、譲渡制限株式の譲渡又は取得について、拒絶していたとしても、望まない株主に株式が渡ってしまうことになる。

3 限界2(相続その他一般承継)
相続その他一般承継の場合には、譲渡制限株式であっても、会社の承認を得ることは不要と解されている。
よって、株主が死亡した場合、会社は、その相続人を株主として拒絶することはできない。そのため、相続人から株主名簿書換の請求があった場合、会社はその請求を拒絶することができない。但し、「遺贈」による取得の場合、相続人であったとしても特定承継にあたるため、譲渡制限株式の制約を受けることになる。なお、相続人からの名義書換請求については、「Q 株主の相続人と主張する者が株主名簿の名義書換の請求をしてきた場合の対応」参照。

4 限界3(支配権が変更される場合(間接取得))
例えば、Aが、その保有するB社株式の保有をその資産管理会社(C社)に委ねていたような場合、B社にとって株主は、C社であり、Aではない。このような場合に、AがそのC社の株式全部をDに譲渡するような場合、B社の株式が譲渡制限株式であっても、当然、B社は、AがC社の株式をDに譲渡することについて口出しできない。DがB社にとって好ましくない者であったとしても、DのB社への参入は譲渡制限株式の制度では防げない。

5 望まない者が参画することを防止する方法
譲渡制限株式の制度は、会社による株式先買権者の指定を認める制度で、望まない者が株式として参画することを完全には防止できない。
そこで、
・ 株主間契約(他の株主の承諾なく譲渡できない同意条項、一定の事由の発生により他の株主に売り渡す義務が発生する売渡強制条項)
・ 取得条項付き種類株式
・ 相続人等に対する売渡請求(会社174条。但し、諸刃の剣と言われている。)
を利用して、閉鎖性をより強固なものにする必要がある。