法務note

Q 配偶者居住権を有する配偶者の権利義務

その他

【配偶者居住権を有する配偶者の権利】
配偶者は、無償で建物全体の使用収益権を有する(民法1028条1項本文)。
但し、所有者の承諾なければ第三者(※1)に建物を使用収益させることはできない(民法1032条3項)。
よって、実際には、建物の使用権限を有するに過ぎない。

※1
Q 配偶者が、家族や使用人と住むことが可能か。
A 原則、「第三者」に使用させる場合には、所有者の承諾が必要(民法1032条3項)。しかし、家族や使用人であれば、独立の占有を有しないと考えられるため、「第三者」に該当しないと考えられる。
よって、所有者の承諾なく、家族や使用人を住まわせること可能と考えられる。

 

【配偶者居住権を有する配偶者の義務】
・ 用法遵守義務
従前の用法に従って、善管注意義務をもって、使用収益しなければならない(民法1032条1項本文)。
もっとも、配偶者居住権は、建物全体に効力が及ぶ。
よって、従前使用していなかった部分、居住の用に供していなかった部分についても、居住の用に供することは妨げられない(民法1032条1項但書)。その限度で用法変更が認められている。

・ 譲渡禁止(民法1032条2項)

・ 無断で第三者に使用収益させることの禁止(民法1032条3項)。

・ 無断増改築の禁止(民法1032条3項)。

・ 修繕が必要な場合、修繕できる(民法1033条1項)。
一時的には配偶者が修繕義務を負う(民法1033条1項)。所有者は、配偶者が相当な期間内に必要な修繕をしないときに修繕をすることができる(民法1033条2項)。
なお、配偶者には、修繕を要する場合(自ら修繕をする場合を除く)、所有者に遅滞なく通知をする義務がある(民法1033条3項。建物について権利を主張する者があるときも同様。)。

・ 通常の必要費を負担(民法1034条1項)
Q 配偶者が負担する「通常の必要費」(1034)とは?
A 使用貸借の595Ⅰの「通常の必要費」と同一概念。
  例      保存に必要な通常の修繕費
              居住建物及び敷地の固定資産税(最高裁昭和36年1月27日判決)
 → 但し、納税義務は所有者にあるため、所有者が支払い、求償することとなる。
 → しかし、求償に応じない場合でも、配偶者居住権の消滅請求をすることはできない。
    (付随的義務の不履行に過ぎない)

・ 損害賠償及び費用償還請求権についての期間制限(民法1036条・600条1項)。

 

【配偶者居住権の消滅請求】
配偶者が用法遵守義務等に違反した場合、是正の催告をし、配偶者が応じない場合、所有者は、配偶者への意思表示によって、配偶者居住権を消滅させることができる(民法1032条4項)。