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液状化問題

学問のすすめ

昨年の東日本大震災で液状化した浦安の住宅について、住民らが三井不動産に対して、損害賠償を求める集団訴訟を提起したようです。

 

新聞報道だけなので、詳細はわかりませんが、どうも不法行為に基づく損害賠償が根拠のようです。

 

通常は、売買による瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求を根拠にすることが多いのですが、たぶん消滅時効(正確には除斥期間といいますが)の問題があったのだとおもいます。

 

瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求は、原則、瑕疵(欠陥)を知った時から1年以内に権利行使をしなければいけません。この原則によれば、知った時、すなわち昨年の震災時(3・11)から1年ということになります。

 

しかし、多くの場合、売買契約書の裏面に小さな文字で、この期間が、「引渡時から」1年とか2年と定められ、上記原則が修正されています。

ですので、既に契約書で定められた期間が経過していたのだと推測されます。

 

また、「品確法」という法律で、基礎のような「住宅の構造耐力上主要な部分」については、契約書に上記のような修正がなされていても、引渡から10年まで瑕疵担保責任を追求できるという更なる修正がなされているのですが、引渡しから10年が過ぎていたり、この法律の施行(平成12年)前の契約だったと推測されます。

 

このような事情から、瑕疵担保責任ではなく不法行為に基づく損害賠償という法律構成だったのでしょう。

不法行為に基づく場合と、瑕疵担保責任に基づく場合の大きな違いは、売主の認識まで立証しなければならない点かと思われます。

 

瑕疵担保責任の場合、当該住宅の「瑕疵」すなわち、住宅に内在する欠陥の存在を立証すればいいのですが、不法行為を理由とする場合、売主の「過失」を立証しなければならず、そのためには、液状化する可能性がある土地であることを認識し(または認識し得べきで)、それに対する対策が取られていない土地であることを認識していたという売主側の主観を立証しなければならないというハードルが加わるのだと思われます。

 

阪神大震災の時も液状化の問題が取り上げられましたが、私が調査した限り、液状化の問題に関する判決はほとんどありません。ですので、この浦安の集団提訴の行方はとても気になります。