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氏名冒用訴訟 6
一方のC弁護士は…。
3か月か6か月の営業停止という懲戒処分となりました。
C弁護士は,この懲戒手続中,弁護士会に対して,
「Aの依頼を受けていた」と反論していたようです。その理由として,「そもそも予告登記がされることは当然分かっていた。だから,Aにばれずに氏名冒用訴訟なんてできるわけがない。」というもののようです。
これ自体とても消極的な理由なのですが,しかし,本当にC弁護士は予告登記を分かっていたでしょうか?知っていたとしても,それを忘れていた可能性がとても高いです。なぜなら,予告登記がなされる場合,登記用の当事者目録や物件目録を裁判所に提出するなどの手続が必要なのですが,C弁護士が提出した訴状にはそれらが添付されていなかったため,書記官がC弁護士に対して,これらの追完(後から提出すること)を求めている記録が残っていたからです。
ところで,なぜこのような氏名冒用訴訟が可能だったのでしょうか。
何か重大なことを代理人でやろうとする場合,本人が本当にその代理人に代理権を与えたのか,本人の意思がとても重要です。どのような場面でも「委任状」ぐらいは求められるでしょうが,更に,委任状に押す印鑑も実印が求められ,印鑑証明書の提出を求められたりすることもあります。もっと慎重に事を進めようとすれば,本人に直接会ったりして,本人から直接,代理人に代理権を与えたか否かを確認をする必要があるでしょう。
ところが,裁判では,訴訟手続というとても重大な行為をするにもかかわらず,訴訟委任状という書類に印鑑さえ押されていれば(しかも,それは三文判でもいいのです。),裁判所はそれ以上のチェックはしません。実印を押すことや,印鑑証明書の提出も求められません。ましてや,裁判所が,本人に電話連絡をして,「本当に○○弁護士に委任しましたか?」などと意思確認をすることもありません。それは,弁護士が裁判所からある程度信頼されているからなのでしょう。
しかし,弁護士の数も多くなってきたり,昨日のニュースにあったような「ニセ弁護士」の事件がでてきたりすると,もう弁護士だからといって信用されなくなってくるでしょう。
訴訟委任状には実印を押して,印鑑証明書も添付するようにと裁判所から要求される日も近いのかも。