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留置権と倒産 1
学問のすすめ
留置権とは,ある物を留置することが出来る権利(物権)です。
例えば,自動車を修理したけれども,その修理代金を支払ってくれない場合には,
修理代金を支払ってくれるまで,その自動車の返還をしないことが正当化させるのです。
ですから,その反射的効果として修理代金の支払を促すことが出来るのです。
このように,留置権は,債権の回収を図るための権利なので,抵当権や質権と同様,
担保権の一種です。
ところが,相手方(債務者)が破産や民事再生等の倒産手続に入った場合,
この留置権がどのように取り扱われるのか,未だ解明されていない問題点が
いくつもあります。
その一つに,民事再生手続における商事留置権の効力という問題があります。
これは,破産手続上,商事留置権は特別の先取特権と見なされ,優先弁済権が
認められている(破産法66条1項)のに対して,民事再生法では別除権としては
認められているものの(民事再生法66条1項),破産法66条のような規定は
民事再生法にはありません。
そこで,商事留置権が民事再生手続においても,優先弁済権があるのか否かが
問題となったのです。
この点について,東京地裁平成21年1月20日判決(金融法務事情1861号26頁)
及び東京高裁平成21年9月9日判決(同1879号28頁)は,いずれも商事留置権
の優先弁済権を否定し,留置的効力しかないと判断しました。
留置権,特に商事留置権については,いくつか重要な判例がでていますが,
これらの判例と整合性があるのか少し疑問があるのですが,少し考えてみます。