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更新料支払義務 -2
「更新料支払義務 -1」では,更新料支払条項が消費者契約法に反するか否かの問題を取り上げました。この問題は,借家人が,事業者ではない個人が対象となりますので,借家人が会社等の事業者の場合には,消費者契約法に反して無効になるかどうかという問題は生じません。
では,更新料支払条項は,法定更新の場合にも適用されるのでしょうか。この問題は,借家人が事業者であっても生じる問題です。
通常は,契約期間の満了前に,オーナーと借家人間で,更新合意(更新契約)を締結し,その際に,更新料が支払われるのが通常です。
ここでの問題は,法定更新がなされた場合(例えば,オーナーが期間満了の6か月前までに更新拒絶をしなかった場合や更新拒絶をしていても正当事由がない場合)に,オーナーが借家人に対して更新料の支払いを請求できるか,という問題です。
下級審判例ですが判例は,まずは特約条項の文言によって,法定更新を含んでいるか否かを判断をしているようです。
例えば,「甲乙間に協議が整った場合は契約を更新することができる。この場合,更新料は○○円とする。」とか,「契約期間満了の場合,借家人において更新を希望する場合,更新料として○○円を支払う。」というような条項の場合,更新料は合意更新を前提にしているから,法定更新の場合には更新料は発生しないと判断しています。
逆に,「契約の更新に際して(合意更新,法定更新にかかわらず),乙は甲に対して,更新料として○○円を支払わなければならない。」というように,法定更新の場合にも更新料を支払う義務を明記しておけば,支払義務を認めているようです。
問題は,文言によっては,判断できない場合にどうするかです。この点については,判例も考え方が分かれているようです。
更新料支払義務を肯定する見解は,法定更新も「更新」であることを理由としています。
更新料支払義務を否定する見解は,そもそも法定更新は,金銭的負担なく更新を認める制度であることを理由としているようです。
私は,支払義務否定説がしっくりくる気がします。
オーナーとしては,前記のように,「法定更新」の場合にも更新料の支払義務が発生する旨を明記した契約書にしておくといいのでしょう。
また,法定更新の場合にも更新料支払義務が発生する場合でも,法定更新後の契約期間は「期間の定めのない契約」になります。よって,一度法定更新が生じてしまうと,仮に当初の契約期間が2年でも,その一回分の更新料は請求できますが,その後に法定更新という概念がない以上,合意更新をしない限り更新料の請求は出来ません。