MENU

学問のすすめ。

不動産の任意売却が迅速化?

2008年06月03日

強制執行手続や競売手続きが,不動産を債務者(不動産所有者)の意思に反して強制的に売却してしまうのに対して,債務者(不動産所有者)の協力の下,不動産を市場で売却することを「任意売却」と呼んでいます。

 

本日の日経新聞1面に,この任意売却の手続きを簡素化する方針で,次期国会に関連法案が提出予定との記事が掲載されていました。

 

「任意売却の手続き」なんていうと,なんか難しそうな手続きが必要のように思われますが,なんてことはない,通常の不動産の売却です。

 

ただ,私のような弁護士が関与する任意売却は,通常,担保がついており,また,その担保に関する債権(被担保債権)は,不動産の価値を上回っており,更に,その後順位の担保がいくつも(しかも,その担保権者は,ひと癖もふた癖もあるような業者だったり)ついているようなケースです。

 

このような担保権がついたままでは,通常売却できませんから,売却前に担保権者と個別に交渉をして,担保権抹消について,協力をお願いしなければいけません。協力をお願いすると言っても,ただ「お願いします。」と頭を下げても協力してくれません。「○○円支払うから,担保を抹消して。」というお願いになります。

担保権者が有する債権額を全額支払うことができれば問題ありませんが,通常は,その不動産を売却した売却金を原資として支払うというスキームになりますので,全額は支払うことができません。

 

後順位の担保権者に対しても,「ハンコ代」と称して,10万円から100万円程度の金銭を支払って担保を抹消してもらう交渉が必要になります。

 

このような任意売却は,市場で売却をするため,裁判所による競売手続きによる売却よりも,ほとんどのケースでより高価に売却することができるため,上順位の担保権者は,より多く債権を回収することができるし,また,後順位の担保権者も,競売の場合には,配当が回らなければ0円で強制的に担保が抹消されてしまいますが,任意売却の場合には,多少のハンコ代がはいるというメリットがあります。
更に,債務者(所有者)も,任意売却に協力するということで,「引っ越し代」等の名目で多少の金員を手にすることができるので,関係者全員にとってメリットがある手続きといえます。

 

しかし,ごくまれに,後順位の担保権で,競売になった場合には100%配当が回らないにもかかわらず,莫大なハンコ代を要求する担保権者がいることもあります。
この任意売却は,関係者全員の協力がなければ手続きを進められませんので,このような担保権者がいる場合,任意売却をあきらめるか,担保権者の要求に従って莫大なハンコ代を支払うしかありませんでした。

 

しかし,今後,この任意売却に際して,後順位の担保権者がだだをこねた場合,裁判所の手続きで後順位担保権を抹消することができるようになるようです。

 

この抹消できる範囲がどこまでかはまだわかりませんが,私の実務上の経験では,任意売却で一番だだをこねるのは,不動産に差押をしている税務署や地方公共団体ですね。配当順位で劣後するにもかかわらずです。でも,これらの差押を強制的に抹消することはできないのでしょうね。