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学問のすすめ。

筆界特定制度

2008年06月24日

境界に関する紛争は,従来,「境界確定訴訟」という裁判手続で解決されていました。

 

しかし,やはり裁判手続なので,それなりの費用と時間を要していました。

 

そこで,平成18年1月20日からスタートした「筆界特定制度」という制度が生まれました。
これは,専門家の協力を得て,簡易・迅速に行政レベルで筆界の位置を明らかにしようとする制度です。

 

この筆界特定制度創設後も,従来の「境界(筆界)確定訴訟」がなくなるわけではありません。ですので,筆界特定制度を使わず,筆界確定訴訟を提起しても構いません。また,両方の手続が同時に並行して進むこともあり得ます。

 

そこで,今後は,境界に関する紛争は,このどちらの制度を利用するかという選択をしなければならなくなります(この二つの制度以外にも,境界に関する紛争は,民事調停やADRなどの選択肢がありますが,省略します。)ので,筆界特定制度の特徴を指摘します。

 

まず,筆界特定制度は,筆界特定登記官が,筆界調査委員という専門家の意見をきき,それを参考に,筆界を特定します。公の機関が示した筆界ということで高度の証明力は有することになるでしょうが,しかし,これはあくまでも行政庁が示した筆界に過ぎません。
裁判所は,これとは異なる独自の筆界を定めることができるのです。
ですので,効力は,裁判所の「筆界確定訴訟」の方が上になります。

 

この点からすると,筆界特定によって筆界が特定されたとしても,まだ訴訟になる可能性があるのであれば,最初から訴訟によった方が,時間と費用を節約できるということになるかもしれません。ただ,最初に筆界特定制度を用いておけば,そこで収集された資料等が全て裁判所の証拠とされることによって,訴訟での審理を大幅に短縮できるというメリットも期待できます。

 

次に,筆界特定制度は,速い(と言われています。)。
大体6か月ぐらいと言われていますが,この制度は好評らしく,かなり混んでいるようです。
ちなみに,境界画定訴訟の平均審理期間は,2年だそうです。

 

更に,筆界特定制度は「当事者対立構造」をとりません。
筆界確定訴訟の場合,境界の位置で紛争となっている一当事者が「原告」となり,その相手方が「被告」となり,「対立構造」をとります。すなわち,紛争そのものが顕著に現れます。
しかし,筆界特定制度は,筆界を特定して欲しい者の申請が必要ですが,その「相手方」という概念がありません。申請をうけた登記官が,職権で筆界を調査し,利害関係人に意見聴取などして筆界を特定しますので,「対立」という構造にはなりません。ですので,隣人間で「訴訟」というのを避けたいという方にとってみれば,とてもいい制度といえます。